浄化槽における水質検査の内容

 

pH(水素イオン濃度)

水の酸性・アルカリ性の度合いを示す指標。
pH7のときは中性、7より数値が小さい場合は酸性、大きい場合はアルカリ性。

酸性になる原因
初めから酸性の排水が流入している場合
有機物や油が酸化して、酸性となる(食品工場等)
硝化によるもの(尿の量が多く、有機物の負荷が少ない浄化槽:学校、公民館等)

アルカリ性になる原因
初めからアルカリ性の排水が流入している場合
処理施設に藻類が生えていて、それにより光合成を行っている場合

硝化とは
排水中の窒素化合物から生じたアンモニアを亜硝酸や硝酸に酸化する現象を硝化という。この硝化には硝化菌と呼ばれる細菌が関与している。硝化菌は一般の細菌に比べて増殖が遅いため、下水処理では有機物の酸化分解よりも遅れて硝化が起こる傾向がある。

 


BOD(生物化学的酸素要求量)

水中の比較的分解されやすい有機物が、溶存酸素の存在のもとに微生物によって酸化分解される時に消費される酸素の量
 BODとして測定される物質は、次のように大別できる。
有機物: 生物現象により酸化分解されるものの大部分が有機物であり、BOD測定の主たる目的である。だが、種類・性質ともに極めて多様なため、他の有機物測定方法(CODやTOCなど)の値と一致しないことが多い。
無機物: 硫化物、亜硫酸イオン、鉄(II)など還元性の物質。測定値に含まれないよう対処しても、量や共存物質、操作によっては影響する
アンモニア: 試料中に硝化菌が多い場合、硝化作用を受けて亜硝酸や硝酸へ酸化される過程で酸素が消費される
 BODの培養中にふ卵瓶中でアンモニア性窒素2mg/lが硝酸性窒素まで全て酸化と仮定するとBOD濃度として9.14mg/l上昇する。

 

 

COD(化学的酸素要求量)

 水中の被酸化性物質(主として有機物)を、酸化剤で酸化する際に消費される酸化剤の量を酸素量に換算したもので、BODとともに有機汚濁の指標としてよく用いられる。環境基準は河川についてはBODで、湖沼および海域についてはCODで設定されている。総量規制でCODが用いられるのは海域への影響を考えてのこと。
 有機物が多く水質が悪化した水ほどCODは高くなるが、還元性の無機物(2価鉄、亜硝酸塩等)によってもCODは高くなるため一概に水質が悪いとは言い切れない。また、色がついている試料でもCODの値は上がる。
 

 

SS(浮遊物質量)

水中に懸濁している不溶解性の粒子状物質のことで、粘土鉱物に由来する微粒子や、動植物プランクトン及びその死骸、下水・工場排水などに由来する有機物や金属の沈殿などを含む。処理施設では、生物処理における活性汚泥等がある。

SSは、2㎜から1マイクロメートルの粒径のものが対象。
1㎜のフィルターを通した試料の量で、フィルター上に残った粒子を割って計算

 

 

T-N(全窒素)

窒素には、無機性窒素と有機性窒素がある。
 無機性窒素には、アンモニア性窒素、亜硝酸性窒素、硝酸性窒素があり、有機性窒素は、アミノ酸、タンパク質等有機物に含まれる窒素をいう。

 試料を分解びんに入れ、分解液(水酸化ナトリウム溶液、ペルオキソニ硫酸カリウム)と蒸留水を加える。
 120℃、30分間加熱分解、発色試薬(塩酸)を加える。
 試料を、吸光光度計で測定。

 

 

T-P(全リン)

汚水中のりんは、し尿に多量に含まれている。以前は合成洗剤中に含まれていたが、無リン洗剤の普及により洗剤中のリンは大幅に減少した。
 リンは窒素とともに生物処理においては必須の元素であるが、湖沼、海域の富栄養化の原因物質とされ、総量規制の対象物質となっている。

 試料を分解びんに入れ、分解液(ペルオキソニ硫酸カリウム)と蒸留水を加える。
 120℃、30分間加熱分解、発色試薬(塩酸)を加える。
 試料を、吸光光度計で測定。

 

 

ノルマルヘキサン抽出物質

n-ヘキサン抽出物質とは、試料を塩酸によりpH4以下にしてn-ヘキサンを加え振とう抽出した後、約80℃でヘキサンを揮散させた時に残留する物質をいう。
 n-ヘキサン抽出物質には、油脂、グリース、揮発しにくい炭化水素などが含まれる。元来、水中の油分を測定する目的で測定される項目であるが、油分だけを選択的に測定することはできない。
 水質汚濁防止法では、排水中のn-ヘキサン抽出物質を鉱油と動植物油に分け、鉱油は5mg/ℓ以下、動植物油は30mg/ℓ以下に規制している。

 

 

大腸菌群数

大腸菌群の中には大腸菌のほかに、エアロバクター、シトロバクター、クレブジーラなどの細菌も含まれるが、し尿や下水中で検出される大腸菌群の大部分は大腸菌である。
大腸菌は、その名前が示すように大腸の中に無数に生息し、糞便とともに排出され、その数はし尿1Mℓ中におよそ100万個存在している。大腸菌自体は病原性はない。
大腸菌群の水質試験における意義は、水の衛生上の安全性を示す指標として用いられている。すなわち、病原菌を直接検出するのは操作が複雑で非常に難しいので、比較的検出が簡単で感度が高い大腸菌群試験が用いられて、大腸菌群が検出されなければ病原菌も存在しないという証拠になっている。
水質汚濁防止法の規制を受ける場合には3,000個/CM³以下でなければならない。

2020年06月02日